「あなたに言う。起きなさい」
更新日:2025.9.8
ルカによる福音書 第7章11‐17節
東京神学大学 水野七星神学生
イエス様はナインと言う町に行かれます。一行が町の門に近づいた時、一人の若者の埋葬のための集団と鉢合わせます。イエス様は、大勢の人の中から目立たないように、しかし人一倍絶望の中にある一人の母親を見つけられ、憐れまれました。
「そして、近づいて棺に触れられると、担いでいる人たちは立ち止まった。イエスは、『若者よ、あなたに言う。起きなさい』と言われた。すると、死人は起き上がってものを言い始めた。イエスは息子をその母親にお返しになった。」(14-15節)
イエス様はあたかもその死人が生きているかのように触れ、生きているかのように呼びかけられます。その若者は死んでいました。しかし、イエス様によって生きるものとされ、起き上がってものを言い始めます。
この「起きなさい」は、復活するというときにも使うことがある言葉が使われています。この奇跡は死んだ若者が生き返るものです。しかし命であるイエス様の御言葉により、復活の命にあずかる出来事が起こったのです。勿論、終わりの日の復活ではありませんが、イエス様は死に勝ちました。
イエス様は、たった一人を生き返らせたのではありません。母親も、周りにいる者たちも皆、生きるものとされたのです。墓に向かうと言うことは、死への敗北です。墓はすなわち死の象徴であります。嘆き悲しみ、死のうちへと向かっていく大勢の者たちは、イエス様によって死への道ではなく別の道を行く者とされます。
沢山の人がいる中から、私たち一人一人を見つけてくださるイエス様は、絶望の内にある私たちを、罪の中にあって死へと向かうしかない私たちを憐れまれます。必ずしも自分で不幸を感じている時とは限りません。また、自身の信仰の大きさも全く関係ありません。ただそこにいるやもめを、そこにいる私たちを憐れんでくださったのです。
「あなたたちに言う。起きなさい」。今こそこの御言葉に従って、起き上がって福音を宣べ伝えていきましょう。復活の主が再臨なさるその時まで。アーメン
(2025年8月31日礼拝説教より)